介護業界に飛び込んだ、最初の思い出
介護業界に来て一番最初に体験して、今も心に残っているエピソードについて、お話しようと思います。
最初の特養に入る前、1週間の有休を取って就職試験を受けに行ったんです。
前職の国鉄時代に「障がい者列車ひまわり号」という列車の旅の運動がありまして、そこで知り合った方をきっかけに、就職試験をすることになったんです。
初日ということもあって、「今日から就職試験だ!」とちょっと気負っていました。

就職試験では、一番最初に静養室に行くことになりました。
静養室というのは、看護師さんのスタッフルームのすぐ横にある、病状的に重症化した人が移されるお部屋です。
「部屋の入口で見ていてください」と言われて、看護師さんの看護する様子を見ていたんですが、看護師さんがすごいんですよ。手品師なんですよ。
手品師って口からハンカチいっぱい出すじゃないですか。
あれと同じですよ。背中からガーゼいっぱい出すんですよ。
「うわ手品や!すごいなぁ」って思っていたら、僕の拳が入るぐらいの穴が利用者さんの体に空いていたんです。
褥瘡(じょくそう)です。

介護は「人の命がかかった仕事」
その当日に書いたノートを見返すと、このように書いてあるんですよ。
「この仕事は、できないことはできないと言えるようになろう」
「わからないことはわからないと言えるようになろう」
「でないと人を殺しちゃう」って。
つまり、気負ったらダメだと。
もう自分の素のままで、この就職試験の1週間を過ごそうと思いました。
僕は介護という仕事が「人の命がかかった仕事」だということを、この試験のときに思いました。

そのことを忘れたら、僕はこの仕事をやったらダメだと思っています。