“人として”かかわることが、僕らの仕事です
子どもたちにかかわるところに行くとわかりますが、0歳児からスタートして年長さんになるまでの間に、子どもはとんでもなくいろんなことができるようになります。
とんでもなくいろんなことがわかるようになります。
自分の仕事の結果がとても見やすいのが保育士さんの仕事だと思いますが、僕ら介護職にも同じように結果が出てくるわけですね。
(プロジェクターで映した写真を指して)写真に映っているこの方は、精神病院に入れられる直前でうちの施設にいらっしゃいました。
ずっと「おしっこ!おしっこ!」って言い続ける方なんですね。
この方に、介護に従事する職員さんがかかわると、このように変わるわけです。
この顔の変化が、僕らの仕事です。

魔法を使ったわけではないですよ。
“人として”かかわったということですね。
それからは「おしっこ」と言う回数も段々減っていきまして、3ヵ月くらい経ちますと「おはよう」とあいさつをしてくれるようになりました。
暮らしの中で大事なのは、「自分の意思を行動に移せること」
認知症になられた方に限らず、要介護状態の方は、“できない人・わからない人”という世界に閉じ込められてしまいがちです。
一部の介護施設でも、そのような扱いをしているところがありますね。
買い物に行ったり、自分たちで料理したりといった、人間にとって当たり前の機会を奪っている。
本当は日常生活の中で、できる機会があるはずなのに…いや、絶対にあるのに、そういう環境を用意しないで“できない人・わからない人”扱いする介護事業は少なくありません。
じゃあなぜ行動を縛りつけるかと言うと、こちら側の思うように行動してくれないからなんですね。
みんなにこの話を聞いていただきたかったのは、みんなの暮らしの中でとても素敵なことである「自分の意思を行動に移すことができる」という当たり前を大事にしていただきたいなと思ったからなんです。

これをしっかり大事にしていれば、たとえ介護職以外のどの職業に就いたとしても、このことを軸に、いろんなことへ応用して考えていけると思います。