すぐには理解できないようなことにも、必ず“わけ”がある
これからみなさんが25歳から30歳ぐらいになってくると、周りに認知症の方が増えてくると思いますが、まず覚えておいていただきたいのは「認知症による行動は、病気によって起こるんだ」ということです。
以前ぼくは、小学校4年生の子どもたちにお話をしに行ったことがあるんですね。
小学校ですから、子どもたちは知的障がいや精神障がい、身体障がいを持った方と一緒にいる。
家族の中で、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんが認知症になられた子もいる。
そんな中で生活している120人の子どもたちに「生きることと死ぬこと」について話をしたとき、感想文にこんなことが書いてありました。
子どもたちは障がいを持った方や認知症になられた方を見ると、これまでは「“おかしなことをする人だなぁ”“怖いなぁ”って思ってました」と。
「だけど、自分がおかしいと思うようなことにも、ちゃんと“わけ”があることがわかりました」
「これからはやさしく接していきたいと思います」と、みんなが書いていたんですね。
この子どもたちのように、これだけは覚えておいていただきたい。
どんなことにも、わけがあるんだと。

みなさんのお父ちゃんお母ちゃんが認知症になったら、うんこを食べちゃうかもしれない。
トイレに行ったら、壁にうんこが塗りつけてあるかもしれない。
何度も何度も同じことを聞くことがあると思います。
毎日娘の家に来て、ドアを叩きながら「私の金返せ!」と怒鳴られるかもしれない。
一日中天井を向いて「ウウウウウ」って言い出すかもしれない。
でも、どんな姿をお父ちゃんお母ちゃんや、目の前の利用者さんが見せようが、それにはちゃんと、わけがあるんだということを忘れないでいただきたい。
みなさんが子どもにかかわる世界に行って、同じように子どもがすぐには理解できないようなことをしたとしても、「それにもわけがあるんだよな」というふうに考えていただきたいです。
小学校4年生、10歳の脳は1,300gです。
みなさんの平均は1,400g、つまり10歳になるとほとんど大人の脳に近づきますが、その小学校4年生の子どもたちはちゃんとわけがあることが理解できた。
「これからはやさしく接していこうと思います」という感想文だって書けた。
だからきっと、みなさんにもわかることだと思うんです。
わけを見つけに行くことができる人を、専門職と言う
これからみなさんがどんな仕事に就くのかわかりませんが、どんなことにもわけがあるということをみなさんの中に刻んでおいていただきたい。
子どもの世界に行けば、いろんないじめが起こる。
だけど、それにも必ずわけがある。
そのわけをちゃんと探していける人たちになっていただきたい。
それができる人たちのことを専門職と言います。
素人と専門職の大きな違いは、わけを見つけに行くということです。

つまり、理由探しですね。
子どものところに行けば、子どもがみなさんの姿まで至れるように育みをする。
高齢者を介護する現場に行けば、今までと変わらない暮らしを続けていけるように力を注ぐ。
その程度の違いの話で、他人様(ひとさま)の力を借りないと生きていけない子どもの頃と高齢者・要介護状態っていうのは基本的には同じだということですね。