今回のインタビューの舞台は、医療法人悠山会が運営するグループホーム・ファミリア元八事(愛知県名古屋市)。管理者の深谷拓也さんは、アルバイトとして学生時代から長く勤めた飲食店を辞め、未経験の介護業界へと転職してきました。「日々、身が引き締まる思いで業務に取り組んでいます」と語る深谷さん。33歳の今、彼にとって介護の世界はどのように映っているのでしょうか。

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深谷拓也アイコン
Profile 管理者 深谷 拓也さん

高校生の頃から働いていた飲食店に、卒業後も引き続きアルバイト勤務。リーダーとして活躍するも、将来の安定性に欠けることから悠山会へ入社。介護経験ゼロからのスタートではあったが、働きながら各種資格を取得し、社内最年少の31歳で管理者へ昇進する。

経歴
2007年〜2016年 高校在学中から飲食店にアルバイト勤務
2016年 医療法人悠山会入社。グループホーム元八事へ配属
2019年 同施設にて管理者へ着任
長所 忍耐強い
短所 計画性がない
趣味 音楽鑑賞、読書、テレビ
特技 カラオケ

安定を求め、フリーターから介護士へ

まずは前職について教えてください。

飲食店でアルバイト勤務していました。高校生の頃からバイトをしていたお店で、卒業後も引き続きお世話になっていたんです。途中で何店舗か異動も経験しながら、トータル10年近く働いていました。

  Before After
雇用形態 アルバイト 正社員
業種 飲食店 グループホーム
職種 マネージャー職 管理者
勤務時間 5:00〜14:00/9:00〜18:00
11:00〜20:00/20:00〜5:00
(シフト制)
9:00〜18:00
休日 月8日のシフト制 月8〜9日のシフト制
仕事内容 製造・販売・接客 施設運営・身体介助

どのようなお仕事をされていたのですか?

お店の業種はファーストフード店です。レジ、調理、接客などあらゆる業務を経験し、ほかのバイトスタッフをまとめるリーダーの立場でもありました。やりがいはありましたが、変則的な勤務時間に苦労しましたね。時間の融通が効くし、若くて体力もあったため、かなり無茶な働き方をしていました。

24時間オープンの店舗にいたときは、深夜帯のシフトに入って朝方に帰宅した数時間後、「ランチタイムが忙しいからすぐに来て!」という店長からの出勤要請に応じることも。当時は辛いと感じることもなく楽しく働いていましたが、改めて思い返すと「よくやっていたなぁ」と自分自身に感心します(笑)。

転職のきっかけは何だったのでしょう?

日々の忙しさにかまけて就職活動を後回しにしていましたが、年齢的にも安定したいと考えたことですね。それで、勤めていたお店で正社員になろうとチャレンジしたんですが、社員登用試験に失敗してしまって(苦笑)。

そんな時、当時はまだ交際中だった僕の妻が、知人を介して現在の職場である悠山会を紹介してくれました。結婚のために早く将来の土台づくりをしたかったことと、紹介ということで会社に対する信頼感があったことが入社の決め手です。これが28歳の時ですね。

深谷拓也さん1

では、介護の知識やご経験はゼロからのスタートだったんですか?

はい、まったくの未経験でした。ただ、お店の常連さんにご高齢の方も多く、言葉を交わす機会は毎日あったんです。他愛もないおしゃべりをしたり、「いつも頑張ってるね」と励まして下さったり、高齢者とのコミュニケーションは楽しいというイメージを持っていました。そういった体験もあって、きっと大丈夫だろうという楽観的な気持ちで仕事を始められましたね。入社後は介護士として働きながら、初任者・実務者研修、介護福祉士の資格を取得しました。

仕事をこなしながらの受験勉強は大変だったかと思います。

学生時代は勉強はそんなに好きではありませんでした。しかし、興味がある介護については勉強もとことん頑張れるものだなと実感しています。それに、不規則かつ長時間勤務というライフスタイルを長く続けていたため、忙しい中でも自分のための隙間時間を見つけることは得意分野。短時間で集中するという勉強スタイルは僕に合っていたと思います。

これまでのご経験が活かされていますね。

そうですね。業務面でも、前職で徹底的な接客マインドや効率の良いオペレーションスキルを身に付けたことが大変役に立っています。

深谷拓也2

入居者様との家族のようなあたたかい関係

現在の勤務形態を教えてください。

9時〜18時が勤務時間です。不規則な勤務スタイルだった前職と比べて、生活のリズムが整い、健康的な毎日になりました。休みは週2日のシフト制。自由時間は勉強に充てることが多いですね。

転職前と転職後の1週間のスケジュール

入社5年目ですが、これまでどんな業務を経験されましたか?

入社以来ずっと、こちらの「グループホームファミリア元八事」で勤務しています。利用者様の身体介助を行う介護士としてスタートし、3年目からは管理者を任されています。管理者になってからは、業務のほとんどが施設マネジメントに関すること。ご家族・外部機関との調整や、入退去の手続き、スタッフ管理などですね。もちろん、人手の足りないときには現場のフォローへも入ります。

管理者になられたのは31歳の頃ですね。お若い!

現時点でも、社内では最年少の管理者です。本部スタッフやベテランの先輩方に指導してもらいながら、なんとか頑張っています。

施設のスタッフには、ご自身より年齢が上の方も多いかと思います。スタッフとのコミュニケーションにおいてご苦労などはありますか?

管理者になった当初は臆する気持ちもあったため、幅広い世代のスタッフをまとめることは大変だと感じました。けれど相手が人生の先輩であったとしても、業務上で注意すべきことがあればはっきりと伝えなければいけません。「施設のために」と勇気を出して、決死の思いで(笑)声をかけていましたね。

集合写真

何か指導が必要なときは、相手の気持ちを尊重しながら敬語で丁寧に話すことを心がけています。あとは、感情を表情に出さないように気を付けているかな。元々カッとなるタイプではありませんが、より一層「冷静に・落ち着いて」を自分に言い聞かせています。それに、ファミリア元八事は離職率が低く、スタッフ同士の連携がしっかり取れている職場です。みんなの優しさやチームワークに救われているなと感謝しています。

では、利用者様と接する際に意識されていることも教えてください。

相手に敬意を持って接することが介護の基本です。とはいえ、言葉づかいは「丁寧8割・親しみやすさ2割」くらいの感覚で、状況に応じて使い分けています。利用者様にとって、僕は孫世代。どれだけ肩ひじ張って自分をかっこよく見せようとしても、利用者様たちにはかないっこありません(笑)。自然体で、一緒にいて居心地の良い関係を築けるといいなと思っています。

深谷拓也さん3

年齢の差以外にも、深谷さんのやさしい口調と柔らかい雰囲気に、利用者様はとても癒されているのではないでしょうか。

そうだとありがたいですね。皆さんには、僕らスタッフを家族のように感じてもらえると嬉しいなと思います。

戦争を経験された利用者様が、そのエピソードをお話してくださることがあります。僕らがテレビや教科書でしか知らない出来事を、すごくリアルな息づかいでシェアしてもらえるのは貴重な体験です。昔ながらの大家族のように、異世代間の交流が日常的に育まれている入居施設ってすごくいいものだなと感じています。

必要なのは、毎日の業務を真摯に積み重ねること

介護のお仕事で、最もやりがいを感じる部分は?

グループホームは認知症の方がご入居されている施設です。中には、僕たちの介助を頑なに拒否される利用者様もいらっしゃいます。それでも、ふとした瞬間にケアを受け入れてくれたときは、言葉にならないくらい嬉しいですね。これこそが介護の仕事の醍醐味と感じる一瞬です。

深谷さんのモチベーショングラフ

ケアが難しい利用者様への対応には、どのような工夫をされているのでしょうか。

まずは、スタッフの顔を覚えていただけるよう、いつも笑顔で明るくお声がけすることを徹底しています。介護に特効薬はありませんから、利用者様との信頼関係を築くための根気強い姿勢が大切ですね。認知症であっても、スタッフ一人ひとりの名前を覚えてくれる方。「今日もありがとう」と声をかけてくださるようになる方。予想以上の好転が見られたケースもこれまで多くありました。

ただ、今はコロナ禍でマスク着用が必須のため、お互いの表情を読み取りづらく、もどかしく感じます。目だけでどれだけ感情を表すことができるのか、試行錯誤の毎日です。

なるほど。日々の積み重ねが、信頼関係を生み出すんですね。

そうですね。もし利用者様に興奮や暴力といった周辺症状が出てしまった場合は、その原因を追及することを重視しています。利用者様の立場に立って、なぜそういった行動が出てしまうのか・僕たちの対応に原因となる不適切な点はなかっただろうかとスタッフ同士で話し合い、解決法を一つひとつ探していく。地道な作業の繰り返しです。

スタッフ間での連携については、申し送りや介護記録ももちろん重要ですが、2階建ての当施設では担当フロアを固定制にして人員配置しています。各スタッフが自分の担当フロア内の状態をよりきめ細やかに把握すること、スタッフ間の情報共有を密にすること、利用者様がご自身の近くにいるスタッフの顔を覚えやすくすることが狙いです。

利用者様に寄り添う、皆さんの真摯な姿勢が伝わってきます。

個々に応じたきめ細かなケアができる点がグループホームの良さですからね。真面目な話ばかりになってしまいましたが、明るく和気あいあいとした雰囲気も自慢ですよ。コロナ以前は近隣の高齢者の方をご招待して、演芸大会などを定期的に開催していました。感染症の流行が落ち着いたら地域交流を再開したいし、利用者様を喫茶店やファミレスでの外食へお連れしたいです。カラオケに行って、一緒に歌うのもいいなぁと思っています。

施設内風景

それは楽しそう!コロナの収束が待ち遠しいですね。

今は外出もままならない状況ですからね。代わりに、日当たりが良い1階のテラスで外の空気を感じていただいています。僕も業務の合間や休憩時間に、利用者様と一緒に日光浴をしてリフレッシュしているんですよ

「プロフェッショナルを目指す」目標を胸に

これからの目標を教えてください。

まだグループホームでのキャリアしかないので、サービス付き高齢者住宅など違う形態の施設にも勤務し、ケア経験を積みたいですね。そうやって、さまざまな事例・立場や環境にある方と出会い、より知見を広められるといいなと思います。機会があれば、法人本部での経営・企画業務にもチャレンジしたい。最終的に目指すゴールは「介護のことならすべて任せろ!」と言えるくらいのプロフェッショナルな人間です。

深谷さんは介護の仕事がとてもお好きなんだなと感じます。

誰かの幸せに直結する、そんな介護の仕事に魅了されています。目の前で困っている人に対して「自分はもっとできることがあるはず・こうすればもっと良くなるはず」と試行錯誤を重ね、声がけや接し方の工夫ひとつ・変化ひとつで、相手が変わっていく姿を見ることができる。これは介護職ならではの面白さであり、僕の原動力になっています。

深谷拓也さん4

ファミリア元八事で実現したい夢などありますか?

管理者として、スタッフの介護福祉士資格取得率を上げるよう働きかけています。試験勉強を通して、学びを深めることは利用者様へのより良いケアへつながると、自分自身の経験からも断言できます。資格取得率を上げ、スタッフ全員が体系的に介護を知るプロ集団になることで、施設の質はもっと高まっていくはず。それに、資格取得によって給与面での待遇が上がることも魅力的でしょ(笑)。自分の頑張りが目に見える形で報われるので、努力のしがいがあると思います。だからぜひ頑張ってもらいたいですね。

僕も、今度はケアマネの資格取得を目指して勉強中です。実務経験5年以上という受験資格の条件をクリアするのはもうすぐ。もちろん、一発合格を目指しますよ!

これから介護業界を目指す方へメッセージをお願いします。

僕はこの仕事に就く前、少々ちゃらんぽらんな部分があったと自覚しています(苦笑)。けれど今、誰かの命をお預かりするという意義ある仕事に携わるようになり、自分が大きく成長できたと感じます。介護の仕事は、責任感や向上心を持つことを教えてくれました。

転職に不安を感じている方へ僕が伝えられるのは「一歩、踏み出そう」ということ。自分のことが信じられず「そんな立派な仕事、私じゃ無理かも」なんて自信を持てない人もいるかもしれません。でも、利用者様からの「ありがとう」というひと言に、なぜか思った以上に頑張れてしまうのが、介護の仕事の不思議なところです。たくさんの方の第一歩を待っています。

記事末画像

撮影:土屋 敏朗

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