今回のゲストは、セントケア赤羽(所在地:東京都北区)の訪問入浴スタッフとして働く松田敬生さん。優秀な営業マンとして活躍していた松田さんが、未経験の介護業界へ転職したのは2年前。新たな世界への挑戦に不安はなかったかという問いに、ワクワクの方が大きかったと語ります。「これまで積み上げてきた経験は、どんな仕事でも必ず役に立ちます!」と力強く話してくれました。

大学卒業後、メーカーで法人営業を担当。さらなる活躍の場を求めて外資系企業へ転職するも、入社後すぐにコロナが流行。理想の働き方を実践できない葛藤から、再び転職を決意した。2020年介護職にキャリアチェンジ。訪問入浴スタッフとして働いている。
2007年〜2018年 | 精密機器メーカーの法人営業を担当 |
2018年〜2020年 | 外資系部品メーカーへ転職 |
2020年11月〜 | セントケア東京株式会社へ入社 |
松田敬生さんのLIFE STORY
13年間の営業マン生活から心機一転、介護士へと転身
これまでのご経歴を聞かせてください。
大学卒業後はメーカーに就職しました。途中で転職も経験しましたが、約13年間にわたり法人営業としてキャリアを積んできました。
Before | After | |
---|---|---|
雇用形態 | 正社員 | 正社員 |
業種 | 精密機器メーカー | 訪問入浴介護 |
職種 | 法人営業 | 入浴オペレーター・副所長 |
勤務時間 | 9:00~17:45 | 9:00~18:00 |
休日 | 土日祝 | 週休2日のシフト制 |
仕事内容 | 営業・企画・顧客管理 | 運転・入浴介助・内勤業務 |
法人営業のお仕事はいかがでしたか?
1社目の会社では貨幣処理に関する精密機器を取り扱っており、金融、流通、交通機関から官公庁まで、幅広い業界の方とお付き合いがありました。
顧客の要望に合わせて1から製品をカスタムする会社だったため、営業職とはいえ「モノづくり」の意識を持って働いていました。
機器を触る機会も多く、細かい作業が得意な私にはぴったりの職場。やりがいはありましたが、30歳を過ぎた頃から他業界でも自分の力を試してみたいと考えるようになりました。
そこで、同じ法人営業として外資系メーカーへ転職したのが35歳の時です。けれど、入社半年も経たずに新型コロナウイルスの流行が始まります。

新しい職場に慣れないうちに、社会の大きな変容があったのですね。
早々にリモートワークメインに切り替わり、クライアントはもちろん、社内スタッフ相手も「はじめまして」が画面越しになってしまいました。
前社での営業スタイルは外回りが中心でしたから、ライフスタイルだけでなく、仕事に必要なスキルも大きく変化しました。
思い描いていた働き方ができないもどかしさ、人と会わない生活から生まれる孤独感など、想定外の状況に悩み抜いた結果、再び転職を決意しました。外資系に移って2年後の2020年11月、訪問入浴スタッフとして現在のセントケア東京へ入社したんです。
営業以外の職種へチャレンジしようと思った理由は?
長く営業職として働き、それなりの結果も出してきました。自分の中で「営業」という仕事はやり切ったという達成感があったし、どこの会社に移ってもやることは結局同じかなと思えてしまって。
せっかくだから、今度はまったく知らない世界でゼロから挑戦してみよう!と考えました。
1社目では取引先を毎日飛び回り、クライアントと話をすることが仕事でもあり楽しさでもありました。
そこで、体を動かしてアクティブに働けることと、人との対話・交流がメインの仕事であることの2つを主軸に置いて、興味を持てる仕事を探すことにしたんです。

いくつか候補があったかと思いますが、最終的に介護職を選んだのはなぜでしょうか?
数年前に実家の母が体調を崩しましてね。それ以来、将来は介護が必要になるかもしれないという不安が頭をかすめるように。けれど、介護のイロハを学ぶ時間の余裕もなく、真剣に向き合わないまま日々を過ごしていました。
そこで、異業種への挑戦が頭に浮かんだ時、これを機会に仕事として高齢者ケアに携わってみても良いんじゃないかと考えたからです。
それまで、ご家族以外の高齢者と接するようなご経験は?
学生時代、アルバイトで新聞配達をしていました。配達先の高齢者と顔見知りになるにつれ、電球交換などちょっとしたお手伝いを頼まれるようになったんです。
当時の私は面倒だなと思うことはなく、むしろ頼ってもらえて嬉しく感じていました。
シニア世代との関わりがポジティブな記憶として残っていたことで、介護職への転職もスムーズに決断できたように思います。
自分がなりたい姿への近道は?訪問入浴の仕事を選んだ理由

職場にセントケア東京を選んだのはなぜですか?
業界大手のひとつということで、扱っている介護サービスが多岐にわたっており、さまざまな経験が積めそうだと期待しました。あとは自宅からの通いやすさが決め手ですね。
介護サービスの中でも、あまり耳にしない訪問入浴の現場へ応募されたのはなぜでしょう?
私は介護未経験・資格なしからのスタートです。ケア業務全般を行う入居施設に勤めるのは、知識ゼロの状態では少々ハードルが高いと感じられました。
とはいえ、同じ在宅支援でも、ホームへルパーは自分ひとりで業務を行わなければいけません。
その点、訪問入浴ならチーム単位で動くため、何か分からないことがあったらすぐに誰かに聞くことができます。短期間で技術を身に付け一人前になるには、この環境がベストだと思えました。
実際に働きはじめてからのシミュレーションと目標設定が明確ですね。
ミスマッチを防ぐため、いろいろと調べて選んだ道ですからね。おかげで入社後も戸惑うことなくスムーズに順応できたと思います。
また、面接時に「入浴用機材のメンテナンスや修理が必要なので、精密機器を扱ってきたキャリアを活かしてほしい」と言ってもらったことも心に響きました。
知見に欠ける異業種転職であっても、最初から役に立てるフィールドがあれば、そこをモチベーションの拠り所として頑張ることができますから。

現在の働き方を教えてください。
基本的な勤務時間は9:00〜18:00ですが、訪問スケジュールによって多少前後する日も。固定休の日曜日のほか、シフト制で週1日休みがあります。
以前と比べてライフスタイルは変わりましたか?
前職では、リモートワークが主になって以降、時間の区切りを付けにくくなっていました。顧客の多くも在宅で働いていますから、お互いが個人の携帯電話でダイレクトにつながるようになったのが大きな要因です。
勤務時間外にも連絡が入ってくるので、1日中ずっと仕事をしているような感覚が続いていました。
その点、自分の時間を全力で楽しめるようになったことが、転職したメリットの1つです。休みの日には車で遠出して、風景写真を撮ったり温泉に浸かったりと、趣味に没頭できるようになりました。

訪問入浴の業務の流れを教えてください。
一件あたりのサービス提供時間は45分間です。スタッフは3名一組でチームを組み、お客様のご自宅へ伺います。
訪問先では、寝たままの姿勢で入浴ができる訪問入浴専用の介護用浴槽など、専門の機材を使った入浴介助を行います。看護師によるバイタルチェックも行い、サービス終了後は10〜15分で車両移動。次の訪問先へと向かいます。
決められたスケジュール通りに動く訪問入浴はメリハリを付けて仕事ができます。1件1件完結することで、気持ちを引きずることなく、いつも新たな気持ちで現場に臨めるのが良い点だと思います。
入浴介助のケアの中で、松田さんが最も難しいと感じた部分は?
洗体です。私は介護はもちろん、育児経験もなかったため、他人の体を洗うという行為自体が生まれて初めて。着衣の着脱介助もどうすれば良いのかまるで分からず、最初は冷や汗をかきました。
セントケアでは、研修を受けてからの現場入りですか?
採用後、2日間研修を受けましたが、こちらは理念教育など座学が中心でした。実際の介助方法については、配属先の事業所で訪問チームに入り、先輩から直接指導を受けます。
実践を通して技術を身に付けるため、成長が早いと感じます。初任者・実務者研修は働きながら取得しました。

新たな視点で社会に貢献。異業種経験があるから持てる感覚を武器に
思わずやってしまった…という失敗エピソードはありますか?
勤務開始当初は、湯張りの際にお湯をこぼしてしまったり、機材を壁にぶつけるなど、小さなミスはちょこちょこと(苦笑)。今は作業自体は特に問題なくこなしていますが、つい先日、とても印象に残る失敗がありました。
その日は、はじめてお会いする新規のお客様宅への訪問でした。「今日はよろしくお願いします」とゆっくり大きな声であいさつしたところ、「ちゃんと聞こえている!年寄り扱いするんじゃない!」と怒られてしまって。
仕事に慣れが出てくるにつれ、知らず知らずのうちに先入観が生まれていたんですね。
今回の失敗は、相手の様子をよく観察することなく「要介護者=耳が遠い」という思い込みで動いてしまったのが原因。常にケースバイケースで最善の対応を見極める必要があると、改めて気づかされた出来事になりました。
営業職と介護職を比べて、最も違いを感じる部分はどこでしょう?
ビジネスマン同士だと、お互いが良くも悪くも「仕事」と割り切ったお付き合いをしますよね。一定のルールと価値観を共有した前提で関係が成り立っていますから、時にトラブルが起こったとしてもそれは想定の範囲内に過ぎません。
けれど介護の現場では、さまざまな状況・環境の方と向き合うことになります。例えば親御さんが突然倒れたようなケースだと、何の準備も整わないままの介護生活で家族中がパニック状態。
結果、まさかと思うような要望やご意見、ご相談を受けることも多々あります。
それぞれに納得していただくための対応は苦労でもありますが、それも介護の現場の面白さのひとつ。世の中にはこんなにも多種多様な人生と価値観があったのかと驚かされ、貴重な経験をさせてもらっています。
前職でのスキルを活かせていると思う点を教えてください。
面接の時に担当者から言われたように、機材のメンテナンス面で力を発揮できているかな。やはり毎日使うものなので、すぐに不具合が出てしまうんですよ。

数多くの機械を見てきた松田さんだからこその、福祉用具へのアイデアもあるのでは?
「もっとこうなれば使いやすいのに」はたくさんあります(笑)。
現場で使用している浴槽はメーカーさんによる既製品ですが、実はこれ、15年以上も大きな改良がなされていないそうなんです。
世間ではユーザビリティを意識した商品開発が主流である中、入浴介助というニッチな分野ゆえに、手付かずのまま時代に取り残されている感があります。
介護者がより負担なくケアできる機材に変えるため、現場発信で企画・提案を行う場がつくれると良いですよね。セントケアだけでなく、介護業界全体にとっても意義のある試みになるんじゃないかと。
新たな視点で物事を見られるのは、異業種経験者の強みと言えますね。
そう思います。また、弊社では現在、営業所ごとに機材メンテナンスを行っています。けれど、保守点検に特化した部署を立ち上げて一括管理した方が、効率化と専門性の向上が図れるはず。
この案は、いつか社内で提案できるといいなと思っています。

不安なんて必要ない!積み上げてきたキャリアに誇りを持って
松田さんのこれからの目標を教えてください。
今春、副所長へと昇進しました。通常のケア業務以外にも、スタッフマネジメントなど新たな職務に取り組んでいます。
お客様が嬉しい・楽しいと思える入浴介助を提供するためには、スタッフ自身が楽しいと思える事業所でなくてはいけません。風通しの良い雰囲気で、みんなが明日も働きたいと言えるような職場をつくっていきたいです。
介護転職を目指す人へメッセージをお願いします。
30代半ばで異業種転職を決めた私に、不安や恐れはないのかと聞く人もいました。でも、それまでのキャリアが無駄になることは決してありません。
培ってきた経験をシェアすることで、新たな職場でも大きな貢献ができるのではないでしょうか。
まずは一度、現場を体験してみてください。最初から全部をうまくやろうとする必要はありません。段階を追って、1つずつ課題をクリアしていけば良いんです。介護の世界は想像しているよりもずっと、魅力あふれる世界ですよ。

撮影:丸山剛史
はこちら セントケア東京株式会社