今回のゲストは地域包括支援センターで従事し、インフルエンサーとしても活躍しているライトさんです。複数回の転職を経験したライトさんはどのようなキャリア観を持ってるのか。今後のプランを交えて転職ストーリーを伺いました。

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Profile 社会福祉士 ライト さん

社会福祉士として働きながら、Instagramのフォロワー2.8万人(2023年7月時点)を抱えるインフルエンサー。「介護保険について世界一わかりやすく解説」をテーマに、さまざまな角度から介護に関する情報を発信している。かつてはクラブDJをしていたが、現在は隠居DJとして子どもたちに教えている。

経歴
2011年春 福祉系大学卒業
2011年春 特別養護老人ホームで介護職として勤務
2013年春 介護老人保健施設で支援相談員に
2015年冬 医療療養型病院に移り、地域連携室で従事
2016年冬 リハビリ病院で医療ソーシャルワーカー、通所リハビリ管理運営を経験
2020年春~ 地域包括支援センターの社会福祉士に
長所 ポジティブ 
短所 マイペース
趣味 DJ
特技 ビートジャグリング、掃除、お酒作り

介護職から社会福祉士の道へ

これまでのご経歴を教えてください。

福祉系の大学を卒業後、特別養護老人ホームへ就職しました。介護士として経験を積み、転職を決意。転職後は介護老人保健施設で支援相談員として従事し、医療療養型病院の地域連携室で働いたりもしていました。

その後はリハビリ病院で医療ソーシャルワーカーや通所リハビリの管理運営を経て、現在は地域包括支援センターに従事しています。

  Before After
雇用形態 正社員 正社員
業種 病院 地域包括支援センター
職種 医療ソーシャルワーカー 社会福祉士
勤務時間 8:30~17:15 8:30~17:30
休日 土日祝日 土日祝日
業務内容 入退院支援等 主に地域の高齢者の総合支援や権利譲渡、地域づくり

新卒では介護士として就職し、その後支援相談員として働かれていますが、どのような経緯だったのでしょうか?

もともとは社会福祉士として働きたかったんです。でも、新卒時は就職先がなく…。

最初の特養で生活相談員になれるように頑張ったのですが、道のりが長いことと席が一つしかないということもあってモチベーションも下がっていきました。その唯一の席もしばらく空く予定がないということも分かっていましたので。

それだと転職した方が早く実現できる場合もありますね。

当時もそのように感じたので転職を決意しました。

加えて、特養だとADLが低下していく方のケアが多くなりますが、「元気になる人の支援をしたい!」と思ったのも理由にあります。

転職後にようやく社会福祉士デビューができました。

その後、リハビリ病院へ再び転職されたのはなぜでしょうか?

高齢者施設で働いていると、どうしてもADLが低下していく姿を見ることになります。

支援相談員として働いていくにつれ、元気になって家に帰っていくような支援をしたいと思うようになりました。

なので、「回復期の医療ソーシャルワーカーとして働きたい!」とざまざまな場面で訴えていたら、飲み会で「うちの病院で働かない?」と当時の事務長に声をかけてもらったんです。

ちなみに、飲み会の席ではパフォーマンスを発揮するタイプです(笑)。

そうなんですね(笑)でも、自分の意思をしっかり発信することは大切だと改めて思いました。そこから、地域包括支援センターに転職されたわけですね。

そうです。引っ越しをしたことで職場へ通勤することが難しくなってしまったので転職することに決めました。

転職先でも「ソーシャルワークをしたい!」というのが軸としてあったので、地域包括支援センターがおのずと選択肢に入ってきましたね。仕事内容や条件などを総合的に鑑みて、現在の働き方をしようと決めました。

ソーシャルワークを軸としているのはなぜでしょうか?

医師の判断や施設の方針等は、必ずしもクライエントの利益が優先されないことがあることにジレンマを感じていて…。

「これって社会福祉士としての専門性が活かせているのか?」と思うこともあり、当時は社会福祉士と胸を張って名乗る自信がありませんでした。

もっと専門性を活かしてクライエントのためになる仕事がしたいと思い、ソーシャルワークのできる仕事を探すことにしたんです。

現職の地域包括支援センターは、まさにソーシャルワーク実践の現場ですね。

モチベーショングラフ

どんなところにソーシャルワークの魅力を感じていますか?

理論と実践が結びついたときが面白いです。

日々の仕事は爆速で流れていくため、ゆっくりと実践について振り返る場面は少ないですが、研修等でケースを振り返ったり理論を学んだりすることで、理解を深めることができます。

仕事内容を言語化しにくい職種ではありますが、だからこそ経験や勘ではなくて理論(根拠)があって、それに基づいて実践をすることを意識しています。

知れば知るほど、ソーシャルワークを学問にした人はすごいなーと感心しています(笑)

前職での経験が今の仕事に活きていると感じる点はありますか?

介護保険や医療保険、疾患の理解などの知識は個別ケースの対応で役に立っていますよ。

逆に、これらの知識がない状態で地域包括支援センターで働くことは、なかなかハードなので、しっかりインプットできてよかったと感じています。

また、介護職は医療職との連携に苦手意識を持っている人が多い印象がありますが、僕は病院での勤務経験があることから、特にアレルギーを感じることなく連携ができています。

あと、面談技術は訪問時のアセスメント等に活かされていますね。

思い通りにならないことが、この仕事のやりがい

地域包括支援センターでの仕事内容を改めて教えてください。

メインは地域の高齢者からの総合的な相談窓口です。そのほか、虐待や消費者被害など、高齢者の権利を守る仕事や地域づくりの仕事もしています。

地域包括ケアシステムの根幹を担う仕事として、とてもやりがいを感じる毎日です。

スケジュール

やりがいを感じるのは、具体的にどんな場面でしょうか?

やりがいは「思い通りにならないところ」だと思っています。

と、いいますと?

この仕事をしていると思い通りにならないところも多く、毎回でかい壁にぶち当たるんですね。

都度それを乗り越えて解決していっているのですが、この大きな壁を乗り越えたときに自身の成長を感じるので、そこは自分にとって大きなやりがいですね。

個別のケースを通して、毎回成長させてもらえる仕事だと思っています。

これまでの業務内容とは異なる部分もあったと思いますが、働いてみて気づいたことはありましたか?

在宅のことが全くイメージできていなかった点には、ハッとさせられました。

それまでは医療介護業界一筋でしたが、現職に就くまではいわゆる箱物でのサービスの経験しかありませんでした。

在宅の視点がないソーシャルワーカーって、今思えばとても恥ずかしいことだと…。

地域包括支援センターで働くようになって、対象者の日常にお邪魔させていただくという感覚が身につきました。

今までは、良くも悪くも支援者側のペースであったと反省しています。

仕事において大事にしている価値観をお聞きしたいです。

「丁寧な仕事をする」ということを一番大切にしています。

支援は、丁寧なアセスメントから始まると思っています。本当に困っていることが、相談内容の主訴とは違うことも往々にしてありまして。

僕たち支援者の関わり方ひとつで、クライエントの人生を変えてしまう可能性もあるため、常に緊張感を持っています。

課題を解決するのは、あくまでクライエント自身であることを忘れずに伴走的な支援ができるような意識は欠かせません。

やりがいがある分、責任感も伴う仕事ですね。地域包括支援センターは仕事量も多いのではないでしょうか?

個人的に地域包括支援センターは、今までの職場の中でぶっちぎりで業務量が多く大変だと思っています。マルチタスク過ぎて毎日吐きそうです(笑)

加えて、介護保険制度おなじみの「紙」至上主義がまだまだ抜けません。

書類が山のようにあるので、事務作業の効率化は永遠のテーマですね。タスク管理やPCのショートカットキーなど一般的な時短テクを使って、できるだけ効率化していくことは意識しています。

やはり業務量は多いのですね…。その中でもプライベートの時間はしっかり確保できていますか?

基本的に平日勤務、土日祝日休みなので、プライベートの時間は確保できていると思います。地域の会議等は平日の夜や土日に行われるため、たまに休日出勤や時間外勤務もありますが。

両立のコツは仕事が終わったらバシッと切り替えることですかね。時々引きずることもありますが、そんな日は早く寝ます(笑)。

休みが固定されていると予定も立てやすいですね。お休みの日はどのように過ごされていますか?

休日は家族と過ごすことが多いです。3人の娘がいるのですが、子どもと遊ぶのが一番の楽しみです!若いころクラブDJをしていたこともあって、子どもにDJを教えたりもしていて(笑)

僕自身も歳が離れた末っ子として甘やかされて育ててもらったので、子どもたちにもたくさん愛情を注いであげたいなって思っています!

ライトさん提供

あとは、介護保険解説本・動画を9月ローンチに向けて全力コミットしていますね!フォロワーの方にも案をもらいながら、進めています。

SNS発信は自身の理解力アップにもつながっている

公私ともに充実している様子が伺えます!Instagramでもフォロワーの方と積極的に交流されていますが、発信を始めたきっかけについて教えてください。

Instagramでの発信は2年程前から始めて、介護保険について投稿しています。

仕事では、介護保険について全く知らない人に対してゼロから説明しています。これは、自分の強みだと思って介護保険のジャンルで発信を始めました。

フォロワーの方にとっても、専門家がしっかりと解説してくれているコンテンツだと信頼できます。

そう思ってもらえたらありがたいですね。

介護保険制度って馴染みのない方にとっては理解しにくい部分も多いと思います。でも、誰でも気軽に見られるInstagramで、分かりやすく解説したら有益ではないかと思った次第です。

ライトさん自身も発信を始めて変わったことはありましたか?

仕事柄、介護保険についてわかりやすく説明することは得意だと思っていましたが、投稿を続けることで改めて頭の中が整理できました。理解も深まり、より適切な案内ができるようになったと思います。

Instagramでは、熱い思いを持って発信している医療介護関係者が多くいます。いろんな職種の方と情報交換や意見交換ができるようになったことは、僕にとって大きな収穫ですね。Instagramからリアルで繋がることができたり、新しい世界を体験させてもらっています。

多くの方と交流する中で、社会福祉士が最強の専門職だと思いました。

フォロワー2.8万人という数字が、多くの人に役に立っている証拠だと思います。休日も更新することも多いのでは?

そうですね。休日も作業することはありますが、仕事の延長線上と位置づけて情報発信をしているのと、結構マメなタイプなので更新も苦にはならないですね。

でも家族との時間は優先したいので、そこは守りながら進めています。

今後も投稿を楽しみにしています!今後の目標を教えてください。

目標は、社会福祉士として独立することです。そのために実践経験をたくさん積ませていただいております。

Instagramも、独立時に自分の名刺代わりにできればと思っていまして。

独立する目標があるのですか!

はい。独立型社会福祉士として事務所を開設することは、社会福祉士を取得したころからの目標です。

判断能力が低下した方の権利を守る「成年後見」の受任をしたいと思っていまして。専門職後見として、社会福祉士の専門性が発揮できると考えています。

最後に、介護職への転職を目指す方へメッセージをお願いします。

すごい辛辣なことを言うと、介護業界はわりとヌルゲーだと思っていて、日頃から意識高く勉強している人は限られていると感じます(僕の地域だけかもしれませんが…)。

ですので、真剣に取り組めば他の業界よりは比較的トップにもなりやすい業界ともいえるのではないでしょうか。

介護業界へ挑戦するなら、ぜひガチで取り組んでもらえたらいいなと思います!