今回の取材先は、北名古屋東ケアプランセンター(運営:株式会社福祉の里)です。新米ケアマネジャー・森本婦左枝さんは、介護士から職種転換したばかり。専業主婦を経てケアの世界に飛び込み、ステップアップを実現してきました。「主婦時代の私は何も持っていなかった」と振り返る彼女から、介護の仕事を通して見つけた「自分への自信」「働く喜び」をお聞きします。

更新
森本 婦左枝アイコン
Profile ケアマネジャー 森本 婦左枝さん

高校卒業後、営業事務として金融会社へ就職。結婚を機に退職し、子育てや義祖母の介護に専念する。10年間の専業主婦生活を経て介護士に。パート勤務ながら管理職を務めるなど活躍を重ね、2023年1月ケアマネへ職種転換。同時に正社員として再スタートを切った。

経歴
1990〜1998年 金融系企業の営業事務などに従事
1998〜2010年 専業主婦として過ごす
2010〜2022年 株式会社福祉の里へ入社。ショートステイ介護士として勤務(パートタイマー)
2023年1月 ケアマネジャーに職種転換(正社員)
長所 前向き
短所 こだわりが強い、心配性
趣味 韓ドラ、KーPOP
特技 裁縫、料理、DIY

義祖母のサポートを通して知った高齢者ケアの世界

これまでのご経歴を教えてください。

高校卒業後、金融会社の営業事務として就職しました。職場全体が活気にあふれる成長企業で、忙しくも楽しい毎日でしたが、結婚を機に退職。2人の子どもに恵まれ、現在の職場で働き始めるまでの10年間は専業主婦として過ごしました。

  Before After
雇用形態 専業主婦 正社員
業種 - 介護
職種 - 介護支援専門員
勤務時間 - 9:00~18:00
休日 - 土日
仕事内容 - 居宅介護支援業務

主婦時代にはご家族の介護をされていたと伺いました。

介護といえるほどのものではないんですが…。夫の祖母のサポートをしていた時期があります。

おじいちゃん・おばあちゃん子だった夫と一緒に、私も義祖父母にはずいぶん可愛がってもらったんです。ひ孫にあたる私たちの子どもが生まれてからはさらに親しく交流しており、義祖父が亡くなったあと、ひとり残された義祖母のことが気にかかっちゃって。何かにつけては様子を見に行き、最終的に老人ホームへ入ることになった際も、入居準備や家財道具の片付けなどは私が担いました。

ただ、義祖母はなかなか気難しい性格だったため、施設スタッフの方もかなり手を焼いていたようで(苦笑)。結局、ホーム入居後も心配事は減らず、96歳で亡くなるまでの数年間、週に何度も面会に通っていました。

子育てでもお忙しい中、おばあさまの様子を気にかけ続けるのは大変だったのではありませんか?

いえ、それがまったく苦じゃありませんでした。訪問を重ねるうちに、義祖母だけでなく他の入居者さんとも仲良くなり、皆さんにお会いするのが楽しみの1つになっていったんです。

いつも面会は子どもたちも一緒だったんですが、私たち親子が訪問するのを皆さんすごく心待ちにしてくださってね。イベントにお呼ばれしたり、クリスマスや子どもの誕生日にはプレゼントをいただいたりしました。

それまで家族以外のシルバー世代に接する機会はなかったため、歳の離れたお友達ができたことが純粋に嬉しかったです。同時に、ケアが必要な高齢者に対して、私にも何か役に立てることがあるのではと思うようになりました。

取材写真2

「私なんて…」自信が持てない自分を変えてくれた職場

高齢者施設での楽しい思い出が、介護業界に目を向けるきっかけになったのですね。

そうです。まずはヘルパー2級を取得し、株式会社福祉の里のショートステイ施設で働き始めました。下の子が小学校に入ったばかりだったこともあり、週2〜3日のパート勤務からスタートしました。

現在は正社員としてお勤めですか?

はい。入社した2008年からずっとパート勤務で、2023年1月に正社員登用されたところです。同時に、介護士からケアマネジャーに職種転換して「北名古屋東ケアプランセンター」へ異動してきました。

取材写真3

非正規での働き方を長く続けたのは、やはりご家庭を大切にしたいという想いから?

それもありますが、やっぱり社員となると責任も重くなりますからね。正社員の話は何年も前から誘ってもらっていたんですが、なかなか踏ん切りがつかなかったのが正直なところです。

付け加えるなら、福祉の里では非正規雇用者にも昇進・昇給のチャンスがあるんですよ。私もパート勤務のまま「係長」まで昇進し、現場をまとめるマネジメント業務を担っていました。働き方を問わず、キャリア形成のサポートが充実していたため、モチベーションはずっと維持することができていました。

雇用形態で区別されない仕組みは嬉しいですね。周囲から頼りにされていた施設時代の様子が目に浮かびます。

とんでもないです!最初の頃はまったく順調とはいえない日々でしたし。

介護士としてのスタートは40歳目前の頃でしたが、周りの若いスタッフたちと比べて、やっぱり仕事の覚えやスピードが違うんですよね。当初は9−14時の時短勤務だったため、こなせる業務量が少なかったことも申し訳なく感じていました。

取材写真4

10年ぶりの社会復帰は、やはり不安な気持ちの方が大きかった?

はい。当時は自己評価ゼロでしたから…。

家庭を守る主婦としての役割は、しっかりこなせていたと思うんです。家事・子育て・義祖母のサポートだけでなく、裁縫やDIYも好きだし、地域活動にも積極的に参加して充実した毎日を過ごしていました。

ただ、1人の社会人として考えた時、自分は何者でもないなと。これといった取り柄や誇れるキャリアもなく、本当に何も持っていない人間だと卑屈に感じていました。

自信を回復するまでには、森本さんの大変な努力があったのでしょうね。

互いを認め合う職場の風土が、私を救ってくれました。

例えば「仕事は早ければ良いってものじゃない」という価値観です。少しくらい作業スピードが遅くても、むしろそれをポジティブに捉えてくれたんですね。「利用者さまとじっくり向き合えるスタッフがいてくれるからこそ、その間に他の人が別の業務を済ませられるんだよ」って。

年齢も個性も得手・不得手も、人それぞれで当たり前。周囲が長い目で見守ってくれたおかげで、自分自身がどんどん変わっていくのを感じました。家庭環境の変化に合わせて徐々に勤務日数も増やしていき、無理のないペースでステップアップのチャンスをもらって…。今の会社とめぐり会えたことは、まさに人生の宝物。本当に感謝しています。

モチベーショングラフ

日常全体をサポートしたい。ケアマネへの職種転換を決意

正社員転換と職種変更という変化は、以前なら想像もしなかったご自身の未来の姿ではないでしょうか。今回、さらなるチャレンジを決意したのには何か理由が?

自分をもう一段階成長させたい・福祉の世界をもっと深く掘り下げたいという気持ちが一番の理由ですね。

ケアマネ資格に関しては、介護の仕事を始めた当初から漠然とした憧れがありました。実際に取得したのも、5年くらい前の話です。とはいえ、当時の配属先であるショートステイ施設では資格を活用する機会がなく、介護士の仕事も十分楽しかったので、このまま資格は使わずに終えてもいいかなとさえ思っていました。

けれど、ショートステイでの勤務が長くなるにつれ、短期入所だけでは利用者さまを支援しきれない部分が見えるようになってきて。その引っかかりが心の中で大きくなってきた頃、懇意にしていた上司が異動するなど環境にも変化が訪れました。次のステージに進むべきタイミングなのかもしれないと捉え、一歩踏み出してみたんです。

ショートステイよりも、利用者さまを幅広くサポートしたいと考えるようになったのですね。

そうなんです。ケアマネ講座の実習中、老老介護や独居高齢者の現実に触れたことで、以前より広い視野で介護の課題を捉えられるようになった気がします。

それに、まるで家族のように利用者さまと密な関係を築く先輩ケアマネの姿は「相手の生活全体をここまでサポートできるなんて!」とまぶしく映りました。短期入所しか知らなかった私にとって、居宅支援の世界は驚きの連続でした。

取材写真5

施設の介護士からケアマネになった今、最も違いを感じる点はどんなことですか?

求められる能力がまったく違うということですね。

介護士には体を動かしながら目の前のタスクを片っ端からこなしていく「瞬発力」が必要だし、多数の関係者と接するケアマネは「調整力」「コミュニケーション能力」が重要になってきます。施設では管理職でもあったため、全体を見渡していたつもりですが、ケアマネにはより長期的・大局的なモノの見方が求められると痛感しています。

仕事に対する意識や心構えも変わった?

大きく変わりました。担当ケアマネとして、ひとりで多くの業務を処理せねばならないため、施設の頃とはまた違った重責を感じます。

年齢的に自分の記憶力には不安があるから、いつも「TO DOリスト」を書き出し、◯週間後までにこれ・△ヶ月後にはこれ…といった風に細かくスケジューリングして、とにかく漏れがないように必死です(苦笑)。

取材写真6

家庭との両立には気持ちのメリハリが肝心!

現在の勤務スタイルについて教えてください。

勤務時間は9〜18時で、土日祝がお休みです。残業は一切なく、ワークライフバランスが実現できる職場だと思います。

ショートステイ勤務の頃と生活は変わりましたか?

変わりましたね!施設時代は夜勤にも入っていたため、睡眠リズムが乱れることもありました。無理が効かなくなる50代に突入したタイミングでの職種転換は、良い選択だったと思います。

スケジュール

仕事と家庭を両立するコツをぜひ教えてください。

オンオフのメリハリをつけることでしょうか。仕事・家庭・自分の時間をそれぞれ集中して楽しむことが、うまく両立するコツなのかなと思います。

例えば、家族が仕事や学校で行き詰まっているなと感じた時は、日帰り旅行や外食などイベントを計画してみんなで出かけるようにしています。

森本さんご自身のストレス解消法は?

韓国ドラマやK-POPが好きなので、推し活がいちばんの息抜きです。あと、ちょっと仕事が大変な時は、あえて先の日程で友人と遊ぶ予定を入れるんですよ。そしたら「約束の日まであと◯日。それまで仕事頑張ろう!」とエンジンがかけられるでしょ(笑)。

取材写真7

相手の機微を察する力は、家庭生活で得た最高のスキル

森本さんのこれからの目標を教えてください。

まだケアマネ1年生なので、基本的な知識・経験を身につけることが第一優先かな。その上で、利用者さまやご家族の気持ちに寄り添い、ご不安を和らげられるケアマネになりたいと思います。会社が自立支援を積極的に推進していることもあって、より生活に密着したサポートができるよう、学びを続けていきます。

今後のご活躍がとても楽しみです!最後に、森本さんと同じように、主婦・主夫から介護の世界を目指す方へ向け、エールをお願いします。

私、若い頃はすごく自己中心的で、我慢のきかない性格だったんです。でも、子育てと義祖母のサポートを通じて「待つことができる」人間になれたなと感じます。

それに、誰かのお世話をしていると、相手のちょっとした違和感にも敏感に気がつくようになりますよね。「あ、なんかいつもと違うな…」と思っていたら、案の定パッと熱が上がったという経験、育児あるあるじゃないですか?

家庭生活を通して育んだこうした感覚って、介護の世界において実はもっとも重要なスキルなんですよ。これまで自分が過ごしてきた時間を卑下せず、自信を持って一歩踏み出してほしいなと思います。介護の仕事に興味を持った今の瞬間を見逃さないで、ぜひチャレンジしてください。

取材写真8

撮影:土屋 敏朗

求人の詳細
はこちら
株式会社福祉の里