初任者研修修了者の給料相場
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、初任者研修修了者の平均月給は約30万円でした。
これは職場によっても前後しますが無資格者の平均給与額が約26.8万円であるため、無資格者より高い収入であることが分かります。
1.年齢別、男女別の平均給料
厚生労働省の調査によれば、介護職員の年齢、男女別の平均給料は下の図表のようになります。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
29歳以下 | 29万50円 | 28万3,150円 |
30~39歳 | 33万7,360円 | 30万9,070円 |
40~49歳 | 35万9,180円 | 31万8,630円 |
50~59歳 | 33万9,040円 | 31万7,030円 |
60歳以上 | 27万9,880円 | 29万1,090円 |
年齢が上がるにつれて給料も上がっていき、男女ともに40代が最も高くなっています。男性の方が女性より月換算で1~3万円ほど高くなっていますが、60代になると女性の方が高くなっています。
なお、こちらは初任者研修だけに限らず、実務者研修、介護福祉士を含めた介護職員全体の平均です。
初任者研修修了者は上記のデータと同様、年齢が上がるほど給料も上がる傾向にあると考えていいでしょう。
2.初任者研修修了者の初任給

厚生労働省が発表した「令和4年度介護従事者処遇状況等調査」のデータでは、介護職員の初任給は約28万550円ほどです。
ただし、介護福祉士や実務者研修など、より高度な資格保有者もカウントしているので、介護のエントリー資格である初任者研修の初任給は若干下回ると予想されます。
初任給は新卒か既卒か、さらに年齢や経験の有無など、さまざまな条件で待遇が変わるのもポイントです。
3.手取りは額面給料の7~8割
初任者研修を修了した介護士の給料は、額面給料と手取りの2つの分け方があります。一般的に「給料」として表示されているものは額面給料となります。
手取り額は額面給料から税金や社会保険料などを差し引き、2〜3割少なくなります。初任者研修修了者の額面給料の平均月給は約30万円、手取り月給は約21~24万円程が目安となります。
資格有無による給料の差
1.初任者研修修了者の資格手当

厚生労働省が認定する公的資格の初任者研修を取得しておくと、職場によっては資格手当が支給されます。相場は5,000円程度です。
上位資格の実務者研修の資格手当が1万円から1万5,000円程度なのに比べると差はありますが、毎月支給されるものなので、月給の安定度を高めてくれます。
月5,000円でも年収ベースならプラス6万円。資格を大切に認めてくれる職場なら、より運営への信頼も高まるでしょう。
2.初任者研修修了者と無資格者の実賃金
「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員初任者研修修了者と無資格者の賃金は次の通りでした。
有資格 | 平均月給 |
---|---|
無資格者 | 26万8,680円 |
初任者研修修了者 | 30万240円 |
介護福祉士 | 33万1,080円 |
上記のデータからもわかるように、介護職員初任者研修の修了者の方が、無資格者よりも収入が高い傾向にあります。

初任者研修修了者が、無資格者にはできない身体介護が可能であることや、介護の基礎知識や技術が身に付いていることから、このような差が出ていると考えられます。
さらに、初任者研修修了者には資格手当を出す事業所が多く、5,000円~数万円程度、月収にプラスされることも少なくありません。
ちなみに、資格を持っていることでパート職から正社員への道が開けたり、職場でスタッフのリーダーに抜擢されたりするなど、正規雇用や昇進の可能性も高くなります。
正社員になればボーナスや各種手当も支給されるため、年収アップが見込めるでしょう。
年収差の理由
初任者研修は介護業界では入門資格の扱いですが、無資格者と比べると介護知識や技術のベースがあるので、職場にスムーズになじみやすいというメリットがあります。
介護事業所も、まっさらな状態の新規職員を育てるのに比べれば、採用時の研修にかかる労力や時間のコスト削減になるのです。
さらに、初任者研修修了者の知識や技術をベースに、事業所の特徴や介護サービスの特徴に合わせた指導ができます。
施設別の初任者研修修了者の平均月収
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によれば、初任者研修修了者の平均給料は常勤者の月給で以下のようになります。
施設 | 初任者研修修了者 | 無資格者 |
---|---|---|
グループホーム | 28万1,200円 | 25万5,980円 |
デイサービス | 26万5,900円 | 24万1,630円 |
訪問介護事業所 | 30万6,830円 | - |
特別養護老人ホーム | 33万5,190円 | 29万1,940円 |
介護老人保健施設 | 31万5,700円 | 27万9,050円 |
1.グループホーム
認知症の利用者が、共同生活するグループホームで働く初任者研修修了者の平均年齢48.9歳、平均勤続年数7.9年で、平均給与は月収で28万1,200円。
前年データと比べると、平均月収は27万860円。
1年で1万340円の月収アップとなっていて、給料の改善が確認できます。
2.デイサービス

通所介護、いわゆるデイサービスで活躍する介護職員初任者研修修了者の平均年齢は45.9歳、平均勤続年数7.8年で平均月収は26万5,900円。
前年のデータによると、平均月収は25万4,640円と1万1,260円アップとなりました。
3.特別養護老人ホーム
厚生労働省のデータによると、特別養護老人ホームで働く初任者研修修了者の平均年齢は42.8歳、平均勤続年数8.5年平均給与額は月収33万5,190円。
前年の平均給料額は月収31万7,120円。
前年より月収ベースで1万8,070円アップとなりました。
4.介護老人保健施設
介護老人保健施設で働く全国の介護職員初任者研修修了者の平均年齢は42.6歳、平均勤続年数9.6年、平均給与額は月収31万5,700円でした。
前年と比較すると平均給料額は月収29万8,890円となっていて、1万6,810円の月収アップであるのがわかります。
初任者研修修了者の昇給の状況
介護職員全体の、勤続年数ごとの平均月収
勤続年数による給料の変化はどのようなものでしょうか。以下は「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」を元に、介護職員の勤続年数ごとの平均月収を比較したグラフになります。
このグラフを表にすると、以下のようになります。
勤続年数 | 平均月収 |
---|---|
1年(勤続1年~1年11ヵ月) | 28万550円 |
2年(勤続2年~2年11ヵ月) | 28万8,750円 |
3年(勤続3年~3年11ヵ月) | 29万7,460円 |
4年(勤続4年~4年11ヵ月) | 30万2,180円 |
5年(勤続5年~5年11ヵ月) | 30万5,970円 |
6年(勤続6年~6年11ヵ月) | 30万5,380円 |
7年(勤続7年~7年11ヵ月) | 31万3,320円 |
8年(勤続8年~8年11ヵ月) | 31万3,340円 |
9年(勤続9年~9年11ヵ月) | 31万7,060円 |
10年(勤続10年~10年11ヵ月) | 32万2,990円 |
上記のデータからわかるように、介護職員全体の平均月収は、勤続年数が1年増えるごとに、5,000円~3万円ほど増加しています。
上記のデータは、あくまでも介護職員全体のデータで、介護職員初任者研修修了者のデータではありません。
介護職員初任者研修修了者は上記のデータと同様、勤続年数が増えるほど定期的に昇給すると考えて良いでしょう。
初任者研修修了者が給料を上げる方法とは?

介護職員初任者研修の修了者が、キャリアを形成して収入アップを目指すには、どのようなアプローチがあるのでしょうか。 そのための具体的な方法を4つお伝えします。
1.スキルを磨く
初任者研修修了者でも、現場で長年頑張ってスキルを磨けば、職場で評価されて給料アップにつながる可能性があります。
特に現場で中心的な活躍を見せると、事業所側もリーダーシップを求める、上位資格への資格取得支援をする、などステップアップのチャンスになることも。
介護技術をはじめ、コミュニケーションスキルや実務スキルを磨いていくと、給料アップのチャンスが広がります。
2.夜勤手当を増やす
手軽に給料を増やすなら、夜勤の回数を増やしたり、夜勤の多い事業所に転職したりすると、まとまった支給手当で給料アップが望めます。
夜勤手当は、基本給とは別で夜勤1回につき、5,000円から8,000円程度を支給する施設が多いようです。日勤中心の場合は月5回程度までが一般的。ただし、高い夜勤手当を狙って、夜勤専門で働く正社員という夜勤専従のワークスタイルもあります。
24時間365日体制で介護を続ける有料老人ホームや、特別養護老人ホームの求人案件から、夜勤がある施設か見ていくといいでしょう。
3.実務者研修を受講して介護福祉士になる

さらなる収入アップを考えるなら、上位資格を目指すのが一番です。
とくに介護福祉士の資格取得を目指すのがおすすめです。介護職員の実務経験が3年以上あることと、介護福祉士実務者研修を履修すれば試験にチャレンジ可能です。
初任者研修修了者が介護の現場で着実に経験を積んでいけば、比較的スムーズに資格を取得できるでしょう。
実際の介護の求人案件を見てみると、介護福祉士は初任者研修修了者よりも求人数が多く、より良い待遇で正規雇用される可能性も高いのです。
また、介護福祉士としての経験を積めば、支援相談員やサービス提供責任者といった、さらなる責任ある立場で能力を発揮できる可能性が広がります。
4.転職する
今後、高齢化が進行するにつれて、介護の現場の人手不足はますます深刻になることが予想されます。
介護の求人は、施設や事業所の規模および運営方針、サービス内容はもちろん、地域によっても収入や待遇はさまざまなので、自分に合った職場を探しやすい業界と考えられます。
経験を積んだ介護職員は、どの訪問介護事業所や施設でも頼りにされます。日々、スキルや知識を磨いて上位資格にチャレンジすれば、転職というキャリアアップを成功させる可能性が高まります。
一定期間同じ職場で働き続けて、経験やスキルを身につけるのも大切です。しかし、業務を通して得た自信をベースに、転職して新しい場所でのチャレンジを検討するのも給与アップへのひとつの手段です。
運転免許と併せれば介護タクシー業務も可能
一般のタクシーよりも、初任者研修以上の介護資格が必要な介護タクシーなら、介護の現場とは違った活躍の場が広がります。一般タクシーは普通自動二種運転免許のみで可能ですが、介護タクシーは介護職員初任者研修が必要です。
介護度が高い利用者に配慮しながら乗り降りをフォロー、介護保険を利用した走行など、介護タクシーだから提供できるサービスで、お客を自宅から病院、介護施設などに送る、独立可能な職業です。