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【季節を楽しむ】老人ホームの外出レクの目的や効果とは?

高齢者の方々は、老人ホームに入居していると施設の中にこもりがちになります。外出レクは屋外の空気を吸う良い機会。季節の移り変わりを肌で感じることができ、施設の中では味わえない刺激にも出会えます。

この記事では、老人ホームで行われている外出レクと、デイサービスで行われている外出レクの違いについても説明しています。それではまいりましょう。

合同会社A-assist 代表社員/特定非営利活動法人 日本介護予防協会 理事 大野 孝徳

合同会社A-assist 代表社員/特定非営利活動法人 日本介護予防協会 理事

保有資格:
介護福祉士,介護予防指導士,介護予防専門整体師,上級レクリエーション・インストラクター,応急手当指導員
専門分野:
児童福祉,障がい者福祉,高齢者福祉

名古屋福祉法経専門学校社会福祉学科、佛教大学社会学部社会福祉学科卒業時に小学5年生から取り組んできたレクリエーション指導が今後の高齢者介護事業に活かせることを知り、介護老人保健施設に就職。レクとリハビリを合わせたプログラムを開発する。2006年からは【介護予防の専門家】として現場業務を遂行する傍ら、介護サービス利用者や地域高齢者を対象とした介護予防体操教室を企画・開催。「未来のために、今を大切に」を理念に、高齢者の課題を軸とした課題に取り組む。2016年に独立しフリーランス介護福祉士として研修講師事業、現場アシスト事業、体操教室運営を展開し、2020年に合同会社A-assistを設立。

外出レクは体、頭に刺激を与える

ジャージ姿で立つ老夫婦と健康的な脳と心臓

老人ホームでは定期的に「外出レク」が行われています。

外出レクを行う目的は、引きこもりの防止や意欲の向上、ストレス解消などです。普段は施設の中で過ごすことが多い入居者にとって、職員の見守り・サポートを受けながら外出することにはさまざまな効能があります。

まず挙げられるのが、介護予防になるという点です。要介護状態ではない方にとっては、外出をすることで足腰を鍛えることにつながり、健康の維持・増進を図ることができます。それにより、要介護状態になることを予防できます。

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外出レクの効果

認知症予防

認知症予防の効果も期待できます。外出先では普段とは違った風景を見ることができ、さらに施設内では出会えないような人とコミュニケーションを取る機会も増えます。それが脳にとって大きな刺激となり、認知機能の低下防止につながるのです。

東京都健康長寿医療センター研究所の研究グループは、公共交通機関、日常品の買い物、食事の用意など、日常生活にかかわる動作に問題のない健康な参加者を対象に、引きこもりに関する調査を実行。「社会的に孤立して閉じこもりの傾向が続いていると6年後の死亡率が2.2倍も高まる」という結果を発表しています。この結果は健康な高齢者にも当てはまることなので、元気なうちからできるだけ外出する習慣をつけておくことが、長寿を目指すうえで大切になるのです。

また、外出する頻度と認知症は、相関関係にあることがわかっています。

2015年にユニ・チャーム株式会社が行った調査によると、認知症を発症していても、1週間のうち3日以上外出する方は1年後も同程度の自立度を維持していました。

一方、1週間のうち1日から2日しか外出しない方、もしくはほとんど外出しない方の場合は、明らかに認知症自立度が低下したのです。

外出すると季節の移り変わりを感じ、五感が刺激されて脳が活性化します。脳の活性化は認知症予防につながり、認知症を発症していたとしても、進行を遅らせる効果が期待できます。

孤独感を軽減する

退職や配偶者の死別がきっかけで、孤独を感じるようになる高齢者は少なくありません。そんな期間が長く続くと、自宅に閉じこもりがちになり、心身に影響を及ぼすようになります。

行動範囲が自宅内や庭などに限定されてしまうと、歩行などの身体機能に加え、食事、更衣、入浴、排泄などの日常生活をこなす機能が低下し、やがては要介護や寝たきり状態になる可能性も。そのような事態を招かないためにも、高齢者は最低でも週3回は外出するようにしましょう。

最近は高齢者の外出支援を行う自治体も増えてきました。そのような支援を活用するのはもちろん、自宅周辺を無理のない範囲で散歩するだけでも効果がありますよ。

また、外出する機会を増やすことで、人との出会いがあったり、社会とのつながりを感じられたりと、孤独感の緩和にもつながります。

出かける場所は?

紅葉のなかを楽しそうに談笑しながら散歩する三人の高齢女性

では実際に、老人ホームの外出レクではどこに出かけるのでしょうか。

外出先は多岐にわたりますが、四季の移ろいを感じられる場所は人気のようです。特に、初詣、お花見、紅葉狩りなどの外出レクは、ほとんどの老人ホームで行われています。
ほかにも動物園、水族館、遊園地、コンサート、観劇などに出かけることもあり、近所のレストランでの外食、喫茶店でコーヒーを飲むといった外出レクのプログラムもあるようです。

施設によっては入居者の希望にあわせて外出先を選ぶこともあります。

基本的に入居者の実費負担

外出レクの際に必要な施設の入場料や外食の費用は、基本的に入居者の実費負担です。

どの月にどのような外出レクが行われるかは事前に決められている場合が多いので、前もって入居費用を計算したい場合、外出レクでどれくらい費用がかかるのかを施設側に確認しましょう。

また、基本的に外出レクは任意参加です。出費を抑えたい、あるいは体調面に不安があるというときは、参加を辞退することができます。

健康面でもお金の面でも、無理をしないことが大事ですね。

デイサービスの外出レク

施設・事業所に通って、介護サービスを受ける「デイサービス(通所介護)」でも利用者に対して外出レクが行われている場合がありますが、老人ホームとは少し内容が異なります。

デイサービスの場合、外出は「本人の心身機能の改善に役立つこと」が必須の条件です。
例えば、近所のスーパーへの買い物や施設周辺の散歩ならば機能訓練の一環として認められますが、お花見や紅葉狩り、温泉、買い物ツアーなどは娯楽目的となるので認められないことがあります。その場合は、介護保険外のサービスとなることも注意しておきましょう。

ただ、どのような外出であれば機能訓練として位置づけられるのかは地域によって扱いが変わるので、詳しくは各デイサービスに問いあわせてみてください。

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